【本訳とは】
読書をすることによってもたらされる恩恵は素晴らしいもの。こんなに素晴らしい恩恵を享受できるのが読書好きに限られるなんて、読書好きの私にとっても悲しいことです。外国語の知識がなくても、翻訳されていればその内容を理解できる。そんな翻訳のように、読書が苦手な人や本を読む時間がなかなか取れない人のために、名著といわれる本の内容を出来るだけ分かりやすく伝える活動を”本を訳する(=分かりやすく解説する)”という言葉から”本訳(ほんやく)”と名付けることにしました。
前回までの内容
1冊目 本訳『7つの習慣』第二回:相互依存とP/PCバランス
1冊目 本訳『7つの習慣』第三回:第一の習慣 自分に責任を持つ
1冊目 本訳『7つの習慣』第四回:第二の習慣 目的地をはっきりさせる
1冊目 本訳『7つの習慣』第五回:第三の習慣 重要なことに集中する
本訳『7つの習慣』第六回では、相互依存についてまとめます。
相互依存において大切な信頼残高
今まで第一、第二、第三の習慣で自分の人格を磨き自立するという私的成功について学んできました。
これに対して第四、第五、第六の習慣は公的成功についての習慣です。
公的成功とは、自立のさらに上の段階である相互依存状態になることです。
相互依存とは自立という土台の上にしか成り立ちません。
つまり私的成功が公的成功に先立つということです。
それは何故かというと、自分が自分に対して成功を収めるための対価を払っていなければ、人と共に成功することなど到底できないからです。
人間関係作りに最も大切な要素は、”私たちはどういう人間であるのか”ということ。
だからこそ、最初に第一、第二、第三の習慣で依存から自立を目指したのです。
自立した人間同士が協力し合うという相互依存は、私たちの生産性を飛躍的に向上させてくれるものです。
けれどもそれと同時に、最も心の痛みや挫折感を感じ、幸福と成功の障害にぶつかる領域でもあります。
それはやはり個人だけで済む問題ではなく、人間関係が絡んでいるからです。
第二回で効果性とは、P/PCバランスだと紹介しました。
相互依存における黄金の卵とは、人との活発なコミュニケーションによって生み出される相乗効果です。
そして相互依存におけるガチョウとは、人間関係なのです。
人間関係というガチョウを世話するために、高い信頼関係をつくり、維持し、大事にしていかなければなりません。
この人間関係づくりにおいてカギとなるのが”信頼残高”というキーワードです。
信頼残高とは信頼の貯えのこと。
礼儀正しい行動や親切、正直に接すること、約束を守ることによってこの貯えは増え、相手に安心感を与えることができます。
この信頼残高が高ければ、人とコミュニケーションを取ることは簡単なことです。
しかし逆に、相手を無視したり失礼な態度を取ったりして信頼残高が低いと、顔色をうかがいながら会話しなければならずコミュニケーションは非常に難しいものになってしまいます。
信頼残高が低い状態では活発なコミュニケーションを取ることは不可能であり、金の卵であるコミュニケーションによって生み出される相乗効果も得られません。
だからこそ、相互依存において大切なことは信頼残高なのです。
信頼残高をつくるための六つの預け入れ方法
では、どうすれば信頼残高の貯えを増やすことができるのでしょうか。
これには六つの方法があります。
1.相手を理解する
これは六つある方法の中で一番重要な方法です。
なぜかというと、自分にとって有難いこと、つまり預け入れになるようなものでも、相手の関心事やニーズに合っていなければ引き出しになることがあるからです。
人は自分のパラダイム(という名のレンズ)を通して他人の行動を解釈しがちです。
それで、自分は好意でやったつもりなのに、その好意を相手に受け止めてもらえないと、自分の善意が拒否されたと感じ預け入れの努力を諦めてしまう人がいます。
けれども大切なことは、きちんと相手を理解する、もっと詳しく言えば”相手のパラダイムを理解する”ことなのです。
相手のことを大切に思うのであれば、相手にとって大切なことを自分も大切に思う必要があります。
自分が他人にしてほしいと思うことを、他人にも同じようにしてやるべきではない。その人の好みが自分と一致するとは限らないからだ。
バーナード・ショー(アイルランドの劇作家/1856~1950年)
2.小さなことを大切にする
小さな心遣いと礼儀は人間関係においては大きな預け入れになります。
3.約束を守ること
約束を守ることは大きな預け入れであり、逆に約束を破ることは大きな引き出しになってしまいます。
守れそうにない約束は最初からしないことです。
4.期待を明確にする
相手に自分がどんな期待を寄せているのかをはっきり伝えておきましょう。
例えば夫婦の場合、誰がペットにエサをあげるのか等です。
大体は互いに暗黙の期待を持っています。
たとえ、話したことがなかったとしても、その期待に応えることは大きな預け入れになり、期待を裏切ることは大きな引き出しになってしまうのです。
期待を明確にせずに、期待に応えることは非常に難しいことです。
それは何を借りてくればいいのか分からない借り物競争をしていることと同じです。
見えていない期待を裏切ってしまうのを避けるためにも、話し合う時間を設けて、相手に対して抱いているお互いの期待を明確にしておきましょう。
5.誠実さを示す
個人的な誠実さが信頼を築き、様々な預け入れの基礎になります。
これには、約束を守り、期待に応えること、そして統一された一貫した人格が必要です。
統一された一貫した人格とは、すべての人々に対して平等に同じ原則に沿って接することです。
ある人の前では笑顔で接し、ある人がいないところではその人の悪口を言うことは、一貫した人格であるとはいえません。
それは誠実さを欠いた二面性のある人格です。
二面性のある人格が人に悟られてしまうと、信頼を得ることはできません。
信頼を得られない状態で相互依存を目指すことは不可能です。
だから誠実であることは重要なことなのです。
誠実さを示すことは、相手に対して正直にぶつかることから最初は反発されることもあるかもしれません。
それで多くの人は、陰口や噂話という楽な道を選びます。
けれども、長期においてはこのすべての人々に対して平等に接するという行為が自分を救ってくれることになるのです。
6.引き出しをしてしまったときは誠意をもって謝る
誠心誠意をこめた謝罪の言葉は逆に大きな預け入れになります。(何度も同じ過ちを繰り返せば、引き出しになるので要注意)
~第七回に続く~
まとめ
・第四、第五、第六の習慣は公的成功についての習慣
・公的成功とは相互依存状態になること
・相互依存における黄金の卵とは、人との活発なコミュニケーションによって生み出される相乗効果
相互依存におけるガチョウとは、人間関係
・人間関係づくりにおけるカギは信頼残高
このように相互依存にとって信頼残高とは重要な概念なのです。
人間関係を築く上では、信頼残高への預け入れになるように関わることが大切。
特に預け入れの方法の一つである”相手を理解する”は、今後の回でも非常に重要なカギとなります。
次回の第七回では第四の習慣について紹介します。
それでは~。