運動することは、私たちの健康と脳にとって良いと言われています。
でも、運動することが健康に良いことは分かるけれど「脳にとっても良いってどういうこと?」と疑問に思ったことはありませんか?
この疑問について神経科学の教授であるウェンディー氏による面白いTEDの講演があったので、その内容をまとめます。
脳といってもたくさんの部分がありますが、今回着目する部分は前頭前皮質と側頭葉と呼ばれているところです。
前頭前皮質は、判断や集中、注意、そして性格を左右する重要な働きを担っています。
そして側頭葉には海馬という構造があり、この海馬が事実や出来事を長期記憶として形成し保持する働きを担っています。
運動することは、これら2つの脳の部分に良い効果をもたらします。
その良い効果の1つ目は、たった1回運動を行うだけでドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリン等の神経伝達物質のレベルを高め、そのことにより運動した直後の私たちの気分が高められることです。
運動した後に、気分が良くなるのはこの理由です。
さらに気分が良くなるだけでなく、注意力や集中力そして反応力も高まります。
これらの効果は運動後最低2時間は持続することが明らかになっています。
この1つ目の効果は、たった1回の運動でも効果が表れるという即効性のあるものですが、運動直後にだけみられる一時的な効果です。
脳にとって長期的な良い効果を得るためには、運動を継続する必要があります。
運動することは脳の構造や生理機能を実際に変えます。
運動を継続すると、冒頭で紹介した記憶を司る海馬の部分で新しい脳細胞が作り出され、海馬の脳細胞の容積が増えます。
このことにより長期的な記憶力も改善するのです。
そして気分を良くする神経伝達物質の増加も長続きするようになります。
これらが2つ目の効果です。
そして最後である3つ目に紹介する効果がもっとも重要な効果になります。
その効果とは、”脳に対する保護効果”です。
筋トレをすると筋肉が大きくなるのと同じように、運動をすればするほど脳の海馬と前頭前皮質が大きく、強くなります。
これらの2つの部分は、各種の神経変性疾患や老化現象による認知機能の低下でもっとも影響を受ける部分です。
けれど、この影響を受けやすい海馬と前頭前皮質を運動によって大きく、強く鍛えておくことでこれらの病の進行を遅らせることができるのです。
運動直後に得られる気分の高まりと注意力・集中力・反応力のアップ、海馬の容積増加による長期的な記憶力のアップと神経伝達物質増加、そして脳の保護機能。
これら3つが運動によって得られる脳に対する良い効果であり、「運動することは脳にとってもいい」と言われる理由なのです。
では、これらの効果を得るためには一体どれくらいの量の運動をすると良いのでしょうか。
講演者のウェンディー氏によると、1回あたり最低30分の有酸素運動を含めた運動量を週に3~4回ぐらいのペースを目安に行うと良いそうです。
ポイントは筋肉をつける運動というよりも、心拍数を増やす運動を心掛けることです。
別にこれは難しいことではありません。
少し息が弾むくらいの速さでウォーキングしたり、階段を上ってみたりするだけでいいのです。
「掃除機をかけるときにパワフルに掃除しようとすることは、ジムでエアロビクスをするのと同じくらいの効果がある」とウェンディー氏は付け加えます。
適切な運動量については↓コチラの記事にもまとめていますので、より詳しく知りたい方は読んでみてください。
以上が講演内容の要約になります。
筋肉とかは運動するとついてくるので強くなっていっているという実感がありますが、脳はなにせ目に見えないので「良い効果ってなに?」という感じですが、この講演を聴いてすっきり理解できました。
ウェンディー氏も講演の中で言っていますが、運動することって自分に対して無料で出来る投資なんですよね。
しかも、アスリート選手のように必死に運動しなくても、簡単な運動を日常に組み込むだけで、これらの効果が得られるのもありがたいですね。
それでは~。
「The brain-changing benefits of exercise:脳に良い変化をもたらす運動の効果―ウェンディー・スズキ」←クリックするとYouTubeで視聴できます。