畑ではなく自然の中で野菜を作るということ―言葉とエッセイ

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「言葉とエッセイ」とは、わたしが読書の中で出会った言葉を紹介し、それについてわたしの考えや思いをつづるシリーズです。

↓今回紹介する言葉↓

畑で野菜を作った場合には、チッ素、リン酸、カリ肥料というふうな三要素のみの化学肥料を使って野菜を作っている。一方、この草の中というのは、草の種類が多ければ多いほど、あらゆる養分というものが土壌の中にある。雑草のはえてるところ、クローバーのはえてるところ、混生しているところには、チッ素、リン酸、カリはもちろん、豊富な各種の微量要素が、そこには含まれている。ミネラルがあるし、何でもある。こういう中で、そういうものを吸収して太った植物というものは、複雑な味になる。いわゆる味でいえば、ただ単にあまいということだけでなくて、にが味、から味、すっぱ味、しぶ味、こういうものが全部ミックスされたものが、自然の味、自然に作られたものの味になる。

福岡正信『わら一本の革命』より

わたしは家庭菜園で無耕作、無肥料、無農薬の自然農法を行っている。

除草剤も防虫剤も使っていない。

だから、その小さな菜園には、様々な種類の雑草と本当にたくさんの虫たちが生存している。

それで作物が育つ。

虫食いがひどいだろうと想像するかもしれないけれど、驚くことにそれがない。

虫だらけの中にあるのに、虫害はゼロなのだ。

そしてなんといっても味が抜群に美味しい。

わたしはもともと、味と安全に考慮し、町の小さな生産者直売所などで野菜を購入するようにしていた。

それもスーパーのものより断トツ美味しいのだけれど、それよりも数倍美味しい野菜ができる。

その美味しさの秘訣は、紹介文の通り雑草なのだろうと思う。

雑草が生えているおかげで、チッ素、リン酸、カリだけでなく豊富な各種の微量要素、そしてミネラルが土壌の中に含まれていて、それを吸収しているから、とても美味しい野菜になっているのだ。

しかし、多くの畑では雑草を目の敵にして、せっせと草取りし、除草剤をかけたりしている。

そして、さらにせっせと、わざわざ購入した肥料を土に混ぜて耕している。

でも、その肥料が含む栄養は、雑草が養ってくれるものには及ばないのだ。

それに気づかないで、雑草を敵対視し、除去している。

そんな姿を見ると滑稽だとも思うし、悲しくもなる。

多くの人は、雑草があると、雑草に養分を取られて野菜が育たなくなると思っているのかもしれない。

結論は、そんなことはない。

雑草だらけでも、ちゃんとまともな野菜が普通に育つ。

そして何度も言うけれど、味が抜群に美味しい。

それは雑草が作ってくれた自然の味なのだ。

チッ素、リン酸、カリ肥料だけで作られた味ではなく、豊富な微量要素とミネラルを吸収して、出来上がった味なのだ。

雑草の中に、ものすごい種類の虫たちが暮らしている。

その虫たちが、フンをする。それが天然の肥料になる。

いっぱい虫がいるから、自然の生態系が機能していて、野菜が食い荒らされることはない。

野菜を食べる虫もいれば、その虫を食べる虫もいる。

だから自然の中で、雑草の中で野菜を作ることは、すごく簡単で、楽で、味も抜群なものになる。

一石二鳥どころではない農法なのだ。

わたしが、自然農法という言葉を知った時は驚いたと同時に、「本当なのだろうか?」と疑問にも思った。

けれどやってみて、本当に美味しい野菜が雑草の中で育って、自然農法は真実であると実感している。

雑草は敵じゃない。雑草を増やすこと。雑草の種類を増やすこと。

それが自然の味を持った野菜を作る秘訣なのだ。

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