【読書メモとは】
私は本を読むときは、心に留めておきたい一節を見つけたら半透明の付箋を貼るようにしています。それだけで終わる場合もありますが、より詳しく記憶しておきたいという場合には読書メモを取ります。この記事は、そんな私の読書メモを書き起こしたものです。
<著者ジョンJ.レイティについて>
医学博士。ハーバード大学医学部臨床精神医学准教授。マサチューセッツ州ケンブリッジで開業医としても活躍。研修医訓練の監督補佐を務めるマサチューセッツ精神衛生センターでは10年以上にわたって研修医やハーバード大学医学部学生たちを教える。また、ハーバード大学医師生涯教育プログラムの常勤講師として精神科医たちを教えている。
裏表紙より
臨床研究者として精神医学と精神薬理学分野のピアレビュー専門誌に60以上の論文を発表。1986年にはボストン自閉症研究センターを設立、また、攻撃的行動への新しい投薬治療についての彼の研究から、88年にはアメリカ精神医学学会に新しく攻撃性に関する研究会が生まれた。
80年代にエドワード・ハロウェル医師とともにADHDの研究を始め、1994年に初めてこの障害を分かりやすく説明する著書 Driven to Distraction を執筆。97年には臨床的障害のより軽微な症例について研究した『シャドー・シンドローム 心と脳と薬物治療』(河出書房新社)をキャサリン・ジョンソン博士との共著で発表。また2001年にはベストセラーとなった『脳のはたらきのすべてがわかる本』(角川書店)を刊行し、神経科学が感情や行動、そして心理学全般に与える影響について論じた。
1998年から毎年、同業者による選出でアメリカのベスト・ドクターの一人に選ばれ続けている。また最近では、本書のテーマである定期的な有酸素運動教育の定着に貢献したとして、非営利団体PE4Lifeより最優秀支援賞を受けている。
<内容紹介>
・運動させた子供は成績が上がる
裏表紙より
・運動すると35%も脳の神経成長因子が増える
・運動することでストレスやうつを抑えられる
・運動で5歳児のIQと言語能力には大きな差がでる
・運動する人は癌にかかりにくい
・運動を週2回以上続ければ認知症になる確率が半分になる
<目次>
序文 結びつける
第一章 革命へようこそ―運動と脳に関するケーススタディ
第二章 学習―脳細胞を育てよう
第三章 ストレス―最大の障害
第四章 不安―パニックを避ける
第五章 うつ―気分をよくする
第六章 注意欠陥障害―注意散漫から抜け出す
第七章 依存症―セルフコントロールのしくみを再生する
第八章 ホルモンの変化―女性の脳に及ぼす影響
第九章 加齢―賢く老いる
第十章 鍛錬―脳を作る
あとがき
謝辞
訳者あとがき
巻末 用語解説
●この本に書いてあること
・運動が脳に与える影響について
・運動をすることで様々な症状を解決した人の具体的な事例
・問題別の具体的な運動方法
・運動によって脳が強化される科学的仕組み
●この本を読むのにオススメな人
・脳を鍛えたい人
・運動をするモチベーションを得たい人
・今、何らかの身体的・精神的問題を抱えており、それを解決したいと望んでいる人
・「運動が体にとって(脳にとっても)良い」という科学的根拠を知りたい人
運動は脳のはたらきを向上させるから運動はすべきであるが、だからといって無理にやってはいけない。
→ラットを使った実験により、強制された運動では自発的な運動ほどの効果がでないことが分かっているから。
→だからこそ心から「運動したい」と思う必要がある。
→そう思わせてくれるのがこの本。
【この本に載っている事例の一部】
事例①
最大心拍数の80~90%の間で運動をすることで、17%もの成績の伸びを見せたある高校の「0時限授業」(普通の体育の授業しか出なかった生徒たちの成績は10.7%の向上にとどまっている)
事例②
ストレスが原因でアルコール依存症のようになっていたが、ストレスを感じるたびにお酒を飲むのではなく、縄跳びをすることで、お酒を必要としなくなった女性
事例③
病院では治療できない重病を、ランニングをすることで治した男性
事例③
重度の不安障害を家でエリプティカルマシンを使い運動することで、回復させた女性
【ある高校の「新しい体育」】
能力評価が走るのが遅い生徒たちのやる気をなくさせることに気付く。
→体育科の予算でエアロバイクを購入。
→空き時間に5マイル分エアロバイクをこげば、評価を上げてもらえることに。
→「生徒は能力よりも努力で評価される」
生徒に心拍計をつけて走らせる。
→「もっと真剣に走れ」と注意していた遅い女子生徒の心拍数データをみると平均心拍数は187だった。
→彼女はほぼ全力で走っていたことがあきらかに。
”遅いスピード=サボっていること”ではない。(むしろ逆に”速いスピードだけど本人にとっては楽”なこともありうる)
心拍計を導入すれば、スピードに惑わされず、本人の頑張り度合いを理解することができる。
【自分の最大心拍数の計算方法(大人の場合)】
220から自分の年齢を引いた値
→理論上の最大値とみなす。
【新しい単語を覚える脳の仕組み】
初めてその単語を聞く。
→新たな回路を作るために動員されたニューロンは、グルタミン酸の信号を送受する。
→その単語を二度と練習しなければ、シナプスの連絡し合う力は自然に小さくなり、信号も弱くなる。
→そして単語も忘れる。
要するに、何か新しい物事を覚えたいなら、それを頻繁に使ったり、復習することが大切だということ。
藪の中でも、何回も人が行き来すれば、獣道が出来て通りやすくなるのと同じ。
【実験・研究によって明らかになったこと】
・最大心拍数の60~70%を保って35分間ランニングマシンで走っただけで、認識の柔軟性が向上することが示された。
・30分のジョギングを週に2、3回、それを12週間続けると、遂行機能が向上することが確認された。
→ただ走るだけでなく、複雑な動きを要する有酸素運動を取り入れれば脳にとってなおよい。(例:テニスやロッククライミング、バランス訓練など)
・35件の研究のうち23件が、運動不足の女性の方が乳がんのリスクが高いことを示している。
・体をよく動かす人は結腸がんにかかる確率が50%低い。
・65歳以上で運動をしている男性は、通常死に至る進行性前立腺がんにかかる確率が70%低い。
・摂取カロリーを抑えれば寿命が延びる(少なくとも、ラットを使った実験では証明されている)
【運動とストレス】
定期的に有酸素運動をすると体のコンディションが安定するので、ストレスを受けても、急激に心拍数が上がったり、ストレスホルモンが過剰に出たりしなくなる。
→少々のストレスには反応しなくなる。
ストレスと運動不足という現代社会の二大特徴が、様々な現代病の原因となっている。
→運動すればストレスを減らせる。
→ストレスを減らせば病気にかかりにくくなる。
→つまり、運動することでストレスがもたらす深刻な病気も撃退できる。
【いつも何かに不安で怯えている人がすべき運動】
毎日15分間の激しい有酸素運動(ランニング、水泳、エアロバイクなど)
→「激しい」ということが重要。
→実験により激しい運動だけが不安による肉体的な興奮に対する感受性を和らげることがわかっている。
【依存症の人がすべき運動】
週に5日、30分のハードな有酸素運動が最低ライン。
できれば毎日体を動かした方がいい。
【どうして現代は不健康な人が多いのかの理由】
人間の祖先の「運動量」を計算し、現代の数値と比べてみると、現代人の運動量は石器時代の祖先に比べて38%も少ない。
→それなのにカロリー摂取量は石器時代に比べて大幅に増えている。
→さらに、国が定める厳しい運動の基準にそって、毎日30分運動したとしても、遺伝子に刷り込まれたエネルギー消費量の半分も消費できないことが分かっている。
→旧石器時代の人間は、ただ食べるためだけに、通常1日に8~16㎞も歩かなければならなかった。
現代人は運動しなさすぎ、それなのに食べ過ぎだということ。
【ある専門家の理想的な運動量についての意見】
週に6日、なんらかの有酸素運動を45分から1時間するのが理想。
そのうち4日は中強度で長めにやり、あとの2日は高強度で短めにする。
注意点:2日続けて高強度の運動をやってはいけない。
→体と脳が成長するためには、回復のための時間が必要だから。
【ウォーキングの特徴】
強度:低
心拍数:最大心拍数の55~65%
運動の習慣がない人がまず初めにやるべき運動
1日1時間のウォーキングから始めよう。
〇得られる効果〇
脂肪が燃料として燃やされ、代謝が盛んになる。
気分を安定させるセロトニンの原料となる遊離トリプトファンが血流中に送り込まれる。
【ジョギングの特徴】
強度:中
心拍数:最大心拍数の65~75%
〇得られる効果〇
脂肪だけでなくグルコースも燃やすようになる。
筋肉組織がストレスによって微小断裂を起こし、より丈夫な筋肉になる。
新しい毛細血管が作られる。
免疫力が強化される。
ストレスの緩和。
【ランニングの特徴】
強度:高
心拍数:最大心拍数の75~90%
ちなみに90%あたりになると、代謝は有酸素から無酸素に切り替わる(目安「かなり苦しくなってきた」と思ったとき)
〇得られる効果〇
ヒト成長ホルモンが放出される。(これは「若返りの泉」と呼ばれているもの)
精神を強くする。
【何よりも継続することが大切】
統計によると、運動を習慣しようとした人の約半分は、半年から1年以内に諦めてしまう。
→最大の理由は、いきなり高強度の運動を始めてしまうから。
どんなに簡単な運動でもいいから「これくらいなら続けられる」という、自分にちょうどいい運動、量を見つけること。
止まりさえしなければ、 どんなにゆっくりでも進めばよい。
孔子(春秋時代の中国の思想家、哲学者 / 紀元前551~紀元前479)