私たちは毎日様々な情報に触れます。情報は何か私たちが知識を取り入れたり、判断するための材料としたりとても便利かつ必要なものではありますが、断片的な情報は危険な情報でもあると言えます。今回は、断片的な情報がどうして危険なのかを紹介します。
切り取り方で結論まで変わる―パンプス強制の記事
まずは、いまから挙げる二つの記事の抜粋を読んでみてください。
引用①
女性にハイヒールやパンプスを強制する職場があることに関し、根本匠厚生労働相は5日の衆院厚労委員会で「社会通年に照らして業務上必要かつ相当な範囲かと思います」と述べ、事実上容認する考えを示した。足を痛めるなどとして着用強制に反対する活動が広がっており、根本氏の発言は波紋を呼びそうだ。
引用②
職場で女性のみにパンプス着用を強制することを企業に禁じるよう求める声が上がる中、5日の衆院厚生労働委員会で、根本匠厚生労働相は、状況によってはパワーハラスメントに当たるとの見解を示した。高階恵美子副厚労相も「強制されるものではない」と答弁。今後の議論に影響を与える可能性がある。
どうですか?
2つの引用文を読んでみて、疑問を抱きませんか?
出てくる人物の名前は同じなのに言っていることが真逆じゃないか、と。
引用①の文は、「パンプス強制を容認している文」に見え、
引用②の文は「パンプス強制を否認している文」に見えませんか?
実はこの引用文はとある記事なのですが、二つの見出しがどうなっているのかというと、
引用①パンプス「業務で必要」と容認―厚労相発言、波紋呼びそう
引用②根本厚労相「パンプス強制、パワハラに当たる場合も」
なんと、見出しまで真逆の結論になっています。
種明かしすると引用①が共同通信の記事で、
引用②が毎日新聞の記事になります。
どちらも厚労委員会の答弁をもとにして作られた記事です。
土台としている素材は同じなのに、切り取り方で結論まで違って見えるという、断片的な情報の恐ろしさを気付かせてくれる記事でした。
ちなみに答弁では「パンプス着用指示は社会通念に照らして業務上必要な範囲」とも「状況によってはパワハラに当たる」とも言っています。
だからどちらの記事も嘘を書いているわけではないのです。
しかし、全体を通して聞いてみると「強制はできない」という結論にとれます。
そういった意味では引用①の共同通信の記事が、本来の結論とは異なる悪意ある切り取り方だったと言えます。
しかし、共同通信の記事しか読まない人は根本厚労相に対して不信感を抱いてしまうのではないでしょうか?
なかなか、異なるメディアの記事を読む人もそういないでしょうし・・・。
断片的な情報は鵜呑みにしてはいけない
先程のパンプスの記事も答弁の全文を読めば、共同通信の切り取り方はおかしいということに気が付けます。
こういった断片的な情報の危険性は最近増えてきていると感じます。
その理由がツイッターやドライブレコーダーです。
ツイッターで公共の場で怒鳴り散らしている人の様子の動画がアップされることが多々あります。
その動画のツイートを読んでみると「頭のおかしい人」とか「変な奴に絡まれた」とかが大抵です。
動画を再生してみると、確かにちょっとおかしな人が無害な人にあたっているように見えます。
そういったツイートはみるみるリツイートされ「ほんとこの人ヤバ」とか「妙なやつがいるな~」とどんどん拡散されていきます。
しかしですよ!
私はこの動きにいつも不安を覚えるのです。
何故なら、その動画は一部を切り取っているだけだからです。
もしかしたら、その人が怒り出す理由があったかもしれません。
でもその動画は怒っているところから始まるので、事前になにかあったのか、もしくは本当にいきなりキレているのか分からないのです。
変な人に絡まれている動画も、そもそもその動画を撮っている人になんらかの原因があった可能性もあります。
わざと怒らせたりとかです。
わざと怒らせて、怒り出したらスマホで撮影して、動画撮っている間は、しらを切れば、自分を被害者に仕立てあげられます。
実際は自分のせいで相手を怒らせているのに。
そしてドライブレコーダー。
YouTubeで「ドラレコ」と検索すると、本当にたくさんのドラレコ映像が出てきます。
そんなドラレコ映像でも多いのが煽り運転です。
ドラレコを撮影している車が普通に運転しているのに、いきなり後ろの車が追い越し禁止区間で逆走しながら追い越していく・・・そんな映像なんて山ほど見つかります。
その動画のコメント欄では「後ろの車の運転手おかしい」とか「道路交通法わかってんのか」とかいう煽られた運転手を擁護するコメントでいっぱいになっていますが、それすらも分かりませんよ?
もしかしたら、わざと煽り運転を誘発させるような運転をしていたのかもしれないじゃないですか。
煽り運転の動画を撮るために。
勿論、煽り運転は容認できませんし、追い越し禁止区間で追い越すのも認められることではありません。
でも、私が言いたいのはそこではなくて、事前の情報が無ければ、判断することは危険であるということです。
もしかしたら追い越していった後ろの車は、何か差し迫る緊急の要因があったのかもしれません。
とにかく、一部だけの映像を見せられても、本当にその人が悪者なのかは判断できないのです。
この風刺画を見てください。
これは「メディアは事件の一部を切り取って報道すること」を風刺した画です。
画の上部にはナイフを持った人から逃げている人がいます。
しかしカメラのようなものの画面に写っているのを見てみると、逃げている人の足が手に持ったナイフのように見え立場が逆転しています。
そして英語で「これがメディアである」と書かれています。
これは本当によくできた風刺画だと思います。
この風刺画のようなことが、私たちの日常には多く存在しているのです。
情報は疑うくらいが丁度いい
大きな災害があったとき嘘ツイートが問題になりました。
世の中には自分に注目して欲しいが為に、そういった行為をやってしまう人達がいます。
悪意ある情報の切り取りも、真実を捻じ曲げて発信するという点では嘘と同じです。
嘘の情報は、私たちが誤った情報を信じてしまうだけでなく、正当な情報の信頼さえも落としてしまい、本当の原因を隠してしまう非常に厄介なものです。
だから、私は情報は疑うくらいが丁度いいと思っています。
何か新しい情報を仕入れても、そのまますぐに頭に入れようとせず、ちょっと片隅に置いといて、自分の頭で一度考えます。
この人はどうして怒っているんだろう?
この動画を撮っている人にも問題はなかったのかな?
詳しく知りたいと思った情報は、自分で調べます。
そうして情報の精度を高めていくのです。
皆さんも、これから新しい情報に触れる時には「メディアの風刺画」を思い出してみてください。
それでは、今回はこのへんで。