これだけの笑いの効用を知ったら、笑わないでいることが馬鹿馬鹿しくなる。

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と、知っている人は少なくないと思うけれど、「何か」ではなく、具体的にどういう理由で笑うことが身体と精神に良い効果をもたらすのかを知っていれば、人はもっと意識的に「笑う」ようになるだろう。

そこで今回は「笑い」の効用について、簡単にまとめておく。

①:笑いとエンドルフィン

笑った後に良い気持ちになるのは、脳からエンドルフィンという化学物質が血液中に放出され、それが全身に行きわたり、「ナチュラルハイ」の状態になるから。

つまり、長時間笑いすぎた人は、このエンドルフィンの作用で実質的に「酔った」状態になる。

そして、笑いすぎると涙が出るが、この涙にもエンドルフィンが含まれている。エンドルフィンは天然の麻酔剤の一種でもあるから鎮痛効果がある。

だから、人は身体や精神的に痛みを感じたら、本能的にこの鎮痛効果を求めて涙を流すのだ。そして、その鎮痛効果により、実際に痛みもやわらぐ。

②:笑うと血流が良くなる。

笑うと、血管の内側を覆う「内皮」という組織が伸びて広がり、血管内をたくさんの血液が流れるようになる。そして、その血液には脳から分泌されたエンドルフィンがたっぷり含まれているから、笑うと幸せになれる。

③:①と②の働きにより、笑うと免疫機能が活性化される。

④:笑うと妊娠率も上がる。

<実験↓>

一年間に体外受精を受けた直後の女性219人のうち半数に、ピエロの格好をして20分間、奇術やジョーク、手品やコメディーを演じて見せ、残りの半数の女性には、何もしなかった。その結果、ピエロを演じて見せた女性は36%が妊娠したのに対して、ピエロを演じて見せなかった女性の妊娠率は20%にとどまった。

⑤:「笑いのない生活を送る人」は早く老ける。

笑うと脳からエンドルフィンという化学物質が放出され、それにより良い気分になったり、心身を落ち着かせる鎮痛効果がもたらされ、免疫機能が高まることは説明した通りである。

なので逆に、「笑わない」というのは、これらの効果を得られないということなので、笑わない分だけ免疫機能が弱まり、結果として病気になりやすく、それが原因で早く老け込みやすい。そして、それだけでなく私生活で失敗を重ね、早死にしてしまう傾向が非常に高くなる。

⑥:笑うと痛みは消える。そして難病も消える。

ノーマン・カズンズという笑い療法の創始者であり、パッチ・アダムスの研究のきっかけになった人物のエピソード↓

”カズンズは、強直性脊椎炎という難病と診断された。体内の細胞を結びつけるコラーゲンという繊維が分解されて、しだいに体が動かなくなる病気である。ほとんど全身が動かなくなって、あとわずか数カ月の命を残すばかりとなったカズンズは、ある日、病院を出てホテルの部屋に引っ越した。そこで、彼はおもしろいビデオをどっさり借りた。~ホテルに泊まった最初の夜、ビデオを見つづけて大いに笑ったカズンズは、体内に放出されたエンドルフィンのおかげで、まったく体の痛みを感じずに数時間眠ることができたという。痛みがよみがえると、別のビデオを見て、笑うとまた眠ることができた。~こうして、ビデオを何度も見ながら、できるだけ大きな声を上げて笑う「笑い療法」を自分で考案して実践したカズンズは、六か月後、医師たちを驚かせることになった。病気はすっかり治っていた。消えてしまったのだ!”『ブレイン・プログラミング』より

なぜ、笑うと痛みが消えるのかは、何度も紹介しているようにエンドルフィンという化学物質の効果によるもの。エンドルフィンは天然の麻酔剤の一種であり、モルヒネやヘロインに似た構造を持っている。

カズンズの場合、大笑いを10分間続けると、体の痛みが薬を飲まなくても二時間治まったという。

⑦:「笑いの部屋」で平均入院期間も短くなる。

アメリカでは、カズンズの経験から1980年代に「笑いの部屋」を設置する病院があらわれた。

この部屋は、名前の通り笑うことを目的にした部屋で、面白い映画を観るだけでなく、実際にコメディアンやピエロが頻繁に訪れる。

その結果、笑った患者は健康状態がよくなり、免疫機能が活性化し、平均入院期間も短くなった。

さらに、入院期間が短くなっただけでなく、「笑いの部屋」をつくった病院では鎮痛剤を使う回数まで減ったのだった。

”ユーモアや笑い、明るい気分が病気の回復に結び付くことは、今では数えきれないほどの研究によって証明されている・・・・・・あまり笑わない人、いつも暗い気分でいる人は、心理学者のアイゼンクが言う「疾病誘発パーソナリティ」の持ち主である。こういう人は、楽観的な人より病気にかかりやすく、病気にかかると、ほかの人が同じ病気になったときより治りにくい。こういう言い方もできる。病気になったとき、その病気をどう受け止めるかによって、病気は治りやすくも治りにくくもなるし、治る早さも違ってくる。”パッチ・アダムス

まとめ

これだけの笑いの具体的な効用を知って、「あえて」笑わないでいることは、ゲームでいう「縛り」と同じことをしていると思う。

もっと簡単に楽しく、面白くクリアーできるはずなのに、自分で難易度を上げてしまっている状態。

でも、こういう人も多いと思う。「だって面白いことないし」

これはそもそも前提が間違っている。

面白いから笑うのではない。確かに実際に面白いことがあると笑いやすいんだけれども、自分で意識的に積極的に「笑う」という選択肢を選ぶことが大切なのだ。

そしてそのためにはユーモアを持つことが重要。

「面白くないこと」が起こっても、ユーモアの視点で、その出来事の「面白い面」を見つけられるか。または、見つけようと努力するか。

いつも笑っている人は、その人には面白いことばかり起きるから、いつも笑っているのではない。その人が「笑う」から、面白いことが起きているように見えるのだ。落語と同じ。

確かに実際は「面白くないこと」が起きた時は、ユーモアの精神を働かせ笑うことより、怒ったり、しかめっ面をする方が簡単だ。

けれど、単純に損得勘定で考えて、簡単だからといって、怒ったり、しかめっ面をすることを選ぶのは、自分の心身にとって大きな損なのである。

無理矢理にでも、どうにか笑ってしまった方が、エンドルフィンが放出され、良い気分になり、血流が良くなって、免疫機能が高まり、健康になって、老けにくくなる。しかもタダで!

だから、自分にとっての「得」を考えた場合、「無理矢理笑う」これが一番良い選択になる。

そして、ここまで笑いに効果があるとすれば、病院に必要なのは医者よりもむしろピエロなのだ。

ピエロしかいない病院作ってみたらどうなのだろう。(それってもはや病院と呼べるのか?)

だって、体が動かなくなっていく難病だって笑いで治るんだもの!

となると、もはや病院に行く必要すらない。(これはそもそもそう)

自宅で笑い療法を実践した方がお金はかからないし、良いことづくめだ。

だから今、痛みを感じている人も薬を飲む代わりに大声で笑おう。

面白い映画が手元になくても大丈夫、手鏡をもって考え付くあらゆる変顔をし、無理矢理声を出して笑っていれば、いずれ本当の笑いに変わる。(経験談)

この方法の唯一の弱点は、もし、他の人に見られると奇妙な目で見られる可能性があることくらい。もし実際にそういう目で観られたら、事情を説明して(頭がおかしくなったわけではないことを説明して)一緒になって笑ってもらおう。

これは冗談ではなく、実際に「笑いヨガ」というヨガがちゃんとある。

”ラフター・ヨガ(Laughter Yoga)は、ヨーガの一種。笑いヨガとも言われる。
従来のヨガの呼吸法に「笑い」を取り入れ、年齢や性別や障害にとらわれずできる笑いの体操(笑いの健康法)である。「ヨガ」という名称ではあるが、難しいポーズをとることはない。ラフターヨガのヨガとは、ヨガの笑いを使った呼吸法という意味で、声を出して笑うことによって新しい酸素を体内に取り入れる。ユーモア、ジョークに頼らず、笑いを一つのエクササイズ(運動)としてグループまたは一人で行う。脳は作り笑いと本物の笑いを区別できないと言われているため、作り笑いでも脳に対しては同等の効果があると言われている。15分 – 20分以上笑い続けることによりリラックスでき、健康効果が得られる。2016年現在では、世界101か国以上、10,000以上のグループが活動している。”Wikipediaより

だから笑おう。自分の身体と精神のために。

追記

よく、慢性的なストレスを抱えていると病気になりやすく、笑うとストレスホルモンを下げるから、それで笑いはいいのだ。という説もあるけれど、私は今のところ「ストレスは身体に悪い」という説を信じていないから、この「笑いはストレスにもいい」ということについては、この記事ではあえて触れなかった。

なぜ「ストレスは身体に悪い」と信じていないかというと、「ストレスが身体に悪影響をもたらすのは、本人が<ストレスは身体に悪い>と信じた場合だけである」という研究結果があるからである。

つまり、ストレスについてですら結局、精神の問題なのだ。

このことについて、詳しくまとめた記事↓

ストレスは悪ではない:「ストレスは悪い」と思うことが悪い

「ストレス社会」「ストレスは体に悪い」は大嘘。全ては依存ビジネス


参考文献↓


自動的に夢がかなっていくブレイン・プログラミング

笑い療法の創始者、ノーマン・カズンズの著書↓


笑いと治癒力 (岩波現代文庫 社会 30)

私は自力で心臓病を治した (角川選書 171)
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