TEDのジャドソン・ブルワー氏による「悪い習慣を断ち切るシンプルな方法」という講演が面白かったのでその内容を紹介します。
悪い習慣が出来上がるまでのしくみ
悪い習慣を断ち切る方法を知る前に、私たちの行動がどのようにして習慣化されるのかを学びましょう。
例えば、美味しそうな食べ物を見ると「カロリーだ!食べて生き残れ!」と脳は命じます。
この脳からの命令によって、私たちはその食べ物を口にいれ、味わい、おいしさに満足するのです。
すると体は食べたものと、それをどこで見つけたのかを記憶するように脳に信号を送ります。
これにより、食べ物を見る→食べる→いい気分になるというプロセスを繰り返すことを学習するのです。
しかし、脳はこの学習したプロセスをさらに発展させます。
「悲しいときに何か食べてみたら気分が良くなるんじゃないの?」というふうに。
脳がこのようにプロセスを発展させたことで、私たちは食べ物を見たときだけでなく、悲しい気分の時にも食べ物を食べるようになります。
結果として脳が予想したとおり、悲しい気分が少し和らぐので、この行為を繰り返すことになるのです。
”食べ物を見る”というきっかけが”悲しい気分になる”というきっかけに変わっているだけで、基本的なプロセスは同じということ。
これを喫煙に当てはめてみるとさらに理解が深まります。
タバコを吸い始めるきっかけというのは「カッコイイと思ったから」という理由によるものが多いです。
この「カッコ良くなりたいから」という動機が、食べ物の例でいう「美味しそうな食べ物を見る」「悲しい気分」のきっかけに値する部分。
”カッコよくなりたい→吸う→いい気分になる”このプロセスを繰り返すことで、脳が学習し習慣になるのです。
このプロセスは食べ物のプロセスと同じ構造なため「カッコ良くなりたいから」のきっかけ部分は、やっぱり「悲しいから」「イライラしているから」というものにも変わってしまいます。
こうして多くの人は一度タバコを吸い始めてしまうと、なかなかやめられなくなってしまうのです。
悪習を断ち切る方法は好奇心を持つこと
悪い習慣が出来てしまうしくみが分かったところで、いよいよ本題の悪習の断ち切り方になります。
悪習を断ち切る方法、それは”好奇心を持つこと”です。
ジャドソン・ブルワー氏はトレーニングで、禁煙を試みている人に対して逆に喫煙を勧めさえしたそうです。「吸って、どんな気分になるのか観察してください」と。
すると結果はどうでしょう、ある参加者は「まずい」とコメントしたのです。
そもそも禁煙しようとしている人は、薄々「タバコは体に悪い」と感じているから禁煙を試みているわけです。
そこであえて、好奇心を持って「タバコを吸うと自分がどんな感覚になるか」と意識を向けることで、知識だけでなく、ある参加者のようにまずく感じたりして体で理解できるようになるのです。
ここでポイントなのは”やめることを強制しないこと”です。
どうして強制してはいけないのか、それは脳の前頭前野の仕組みを理解すると分かります。
前頭前野は「喫煙はすべきではないこと」「お菓子の食べ過ぎはよくないこと」を理解しているので、私たちがそうしてしまわないよう働きかけます。これを「認知的制御」といいます。
けれど、この私たちにブレーキをかけてくれる存在である前頭前野は強いストレスを受けると働かなくなってしまうのです。
普通なら怒らないことなのに、イライラしたり、疲れていたり、ストレスが溜まっているときに、つい誰かに怒鳴ってしまった経験はないでしょうか。
これと同じで、禁煙しようと無理矢理吸いたい気持ちを我慢することは、強いストレスなので前頭前野が働かなくなり、吸うのをやめられなくなってしまうのです。
だから強制するのではなく、あくまでも”好奇心を持って向き合うこと”が大切です。
「タバコを吸う」という行為を客観的に考えてみることで、「なかなかやめられない自分」に嫌気を感じたり、ある参加者のように「美味しいと思っていたタバコは実は美味しくなかった」ということに気付いたりします。
すると、そもそも興味がなくなってしまうので、強いストレスがかからず、ブレーキの役割を担っている前頭前野の働きの助けも借りることができて、すんなりやめられるという仕組みです。
えっ、本当にこんなので効果あるの?と思う方もいるかもしれませんが、ある研究でこの「好奇心をもって意識する」というマインドフルネストレーニングは標準的な治療法に比べて禁煙に2倍の効果があることが分かっているそうです。
衝動のままに行動しないこと
これらのことをまとめると、悪習を断ち切る際に大事なことは”衝動のままに行動しないこと”だと言えます。
何かの衝動の裏側には、今までの繰り返しから間違って学習されたことが隠れているかもしれません。
自分がその行動を悪い習慣だと思っているのなら、衝動のままに行動するのをやめる必要があります。
「お菓子を食べたくなったとき」「タバコを吸いたくなったとき」どうしてそうしたくなるのか、またそうすることで自分はどんな気分になるのか好奇心を持ってよく向き合いましょう。
すると間違って学習されていたものに気付けるかもしれません。
まとめ
以上、ジャドソン・ブルワー氏による「悪い習慣を断ち切るシンプルな方法」の講演からの紹介でした。
悪い習慣をやめる方法を脳のしくみから理解できて面白かったです。
それでは~。
「A simple way to break a bad habit : 悪い習慣を断ち切るシンプルな方法 ― ジャドソン・ブルワー」クリックするとYouTubeで視聴できます。